TOPOGRAPHIE DE L’ART

気持ちのいい空間をみつけました。

一見、場末の建物のようですがTOPOGRAPHIE DE L’ARTというギャラリーです。
マレ地区にひっそりと建っていました。ピカソ美術館のすぐ近くです。
展示は平面から立体までおこなわれていて、内容も社会問題を取り扱ったものから科学や宗教的アプローチのものまで多岐に渡るようです。

テキスタイル販売店跡の建物を、ほぼそのままギャラリーとして利用しているので外見は古ぼけていて暗い印象ですが、なかは外の雰囲気とは打って変わって自然光が気持ちよく、広々としているので作品鑑賞にはもってこいの場所です。また、展示も美しく設計されていて、ボロボロの壁やシミのついた床が残っているにもかかわらず、清潔感あふれる爽やかな雰囲気を感じました。過去の展示のようすもどれも趣向が凝らされていて素敵です。

古い街並みを積極的に残しているからこそだと思うのですが、建物が汚かったり入口が目立たなくても、なかはインテリアが素晴らしいお店であったり、今回のような素敵なギャラリーであったりと外と内とのギャップに驚かされることも多いです。なので、最近は注意深く扉や看板を見ながら街を歩いています。こういう発見をすることも最近の楽しみの一つです。

会社訪問

父の友人に取り計らっていただき、パリの家具メーカーPINEL&PINEL社を訪問をさせていただきました。http://www.pineletpinel.com/en/
(父の友人にはパリにきてから非常にお世話になっています。)
この会社は主にヨットやクルーザーのための収納、旅行用トランク、個人邸宅むけの特注家具などを製造しています。
とても親切に工房、ショールーム、デザインルーム全てを案内していただきました。

この会社の特徴はデザイナー、営業、皮職人、縫製職人、木工職人、機械技師が 階をへだてて同じ建物のなかにいて、企画から製造、販売までほぼ全ての業務を一ヶ所で完結していることです。従来の分野ごとの境界をあえてぼかしています。
また、社長もふくめ社員同士が親しく接していて、一人ひとりの心の距離もとても近そうでした。
分野の違うもの同士の会話のなかから生まれる新しいアイデアもあるかもしれません。
このようなリラックスした環境だからこそ、質の高い旅行用トランクや家具に紛れて、革ばりのアーケードゲームのようなユーモアのある製品も生まれるのでしょう。

また、もう一つの特徴はターゲットを狭く絞っていることです。
ヨットやクルーザーを持てる裕福層の愉しみに狙いをさだめて全てがつくられていました。ショールームには、トランク葉巻用の棚腕時計用の棚折りたたみ式のバーが豪華なオブジェと共に並べられています。
そして、全てが細部までこだわり抜かれたものです。

おなじ人の生活の道具をデザインしていてここまで違う世界もあるかと驚かされましたが、ターゲットをしっかりと定めて、その人たちの琴線に触れるものを楽しみながらも妥協なくつくるという姿勢を自分も見習いたいです。
今回も学ぶことの多い貴重な経験をさせていただきました。

ロベール・マレ=ステヴァンス

ロベール・マレ=ステヴァンス(1886年 〜1945年)の設計した建物をおとずれました。ル・コルビジェとおなじ時代に活躍したパリ出身の建築家です。
今回は先輩に教えてもらい、彼を知ることになりました。
彼は近年まで歴史に埋もれてしまっていたそうですが、13年前の回顧展をきっかけに再評価されているそうです。建築以外ではパリ市内のインテリアショップで彼の手がけた椅子(復刻版)を見ることができます。

さて、今回おとずれたのはパリのMéchain 通りにあるもので、彼が40代の1928−29年にかけて建てられたものです。
べつの建物がふさいでいて表通りからは見えないのですが、表通りの1階は、おくの建物との共用部分として彼によって改装されています。

通りから


共用部分のいりぐち、ステンドグラスが印象的でした。
Louis Barilletによるものだそうです。


2つの建物をつなぐ共用部分。
扉はジャン・プルーベの手によるもの。


扉をあけると中庭のおくに姿をあらわします。
こちらもステンドグラスが印象的に使われていました。
建物は
螺旋階段(ステンドグラスの部分)を中心に、12部屋のアパルトマンとメゾネットのアトリエが2つあり、そのうちの1つは画家のタマラ・ド・レンピッカが使用していたそうです。
今も人が暮らしています。
今回は、階段や通路などの共用部分しか見学できませんでしたが、
夏にツアーが組まれている時は、部屋の中へ入ることができるそうです。

ステンドグラスがそとの光を柔らかくなかへ取り込み、やさしく全体へゆきわたっていました。

今回の訪問で、ロベール・マレ=ステバンスに非常に興味が湧きました。
ここ以外にも、彼の作品を見ることができるそうなので巡りたいと思います。