カップマルタンの休暇小屋

南仏にあるル・コルビュジエの休暇小屋へ行ってきました。

この小屋は彼が65歳ころの作品で、彼と妻のガリがバカンスを過ごすために建てたものです。学生のころ狭小空間の設計課題のときに聞いていらい、いつか訪れてみたいと思っていた場所です。
パリからニースへ飛行機で1時間半、ニースから列車で40分ほどでロクブリュヌ=カップ=マルタン駅へ。そこから海沿いの小道を10分弱歩くと小屋に到着します。
・コルビュジエの祖先がこの辺りで暮らしていたこと、ガリ夫人の生まれがこの辺りだったりと夫妻にとって馴染みのある土地だそうです。

小屋の名前にふさわしく、面積は幅3.66m×奥行3.66m(約8畳)×高さ2.26mと非常に狭く設計されています。というのも、人が快適に暮らせる極小空間の実験も兼ねて建てられたためです。
寸法の決定にはモデュロールという人体のサイズをもとに彼自身が作りだした建築設計のための尺度が使われています。

入り口から、正面にある丸いオブジェのようなものはハンガーです。狭いながらも、突き当たりを作り来客からは室内を覗けないようになっています。
実はレストランに密着するかたちで建てられていて、左手の壁には壁画でわかりづらいですが、レストランへの出入口となるドアが隠れています。
レストランに併設しているためキッチンはありません。
シャワーは外に蛇口があり、そこで水を浴びていたそうです。

ガイドの方が色々と説明してくれましたが、その中で僕がもっとも感動したのが窓です。ガラスと遮光扉の2重構造になっていて、扉の内側は鏡になってます。開けると外の光を鏡が反射して部屋の中が驚くほど明るくなります。
言葉にすると簡単な工夫ですが、実際に体験してみると効果絶大でした。

テーブル 下の箱はLC14というれっきとした家具で、写真のようにスツールとして使用したり倒して踏み台にしたりと、組み合わせや使用する人の発想で様々な可能性を持ちます。僕の好きな家具の1つです。

・コルビュジエを知っている人ならカップマルタンの休暇小屋といえばモデュロールを思い浮かべがちですが、それだけではなく、採光のためのディテール、1台何役もするLC14など狭小空間をいかに快適な空間にするかの工夫と、熟練期でも挑戦し続けていた心意気を実際に感じることができて充実した時間でした。

また、僕がいままで見てきた資料には小屋に関する知識はたくさん書かれていましたが、景色やロケーションに関して書かれていたものは少なかったように思います。僕はこの小屋の魅力の1つは間違いなくロケーションだと思います。小屋から眺める南仏の海は雑念を一瞬で吹き飛ばしてしまうほどのものです。パリで忙しい毎日を送っていたル・コルビュジエが日常を忘れるためにこの地を選んだのも納得がいきます。
ここで、ワインを飲みながらぼーっと、過ごしたであろう彼らが羨ましいです。