Le monde nouveau de Charlotte Perriand

ルイビトン美術館で開催されていたCharlotte Perriand(シャルロット・ペリアン)の没後20周年を記念した「Le monde nouveau de Charlotte Perriand」へ行ってきました。
といっても、実は開催されていたのは2019年10月から2020年2月末までで、もう随分と時間が経ってしまいましたが、印象深い展示だったので記録しておこうと思います。あくまで僕の理解と解釈です。

Charlotte Perriand(シャルロット・ペリアン)
フランス人の女性デザイナーで、ル・コルビジェの家具をほぼデザインした人物として有名な方です。カッシーナから復刻されているLCコレクションが有名で、見たことのある方も多いと思います。実は日本のデザイン界にも非常に大きな影響を与えた人物で、1940~1941年にはコルビジェの事務所で同僚だった坂倉準三の誘いで、輸出工芸指導の目的で来日したりもしています。その際、日本各地を旅して様々な文化や工芸に触れたそうですが、その案内人はなんと柳宗理。滞在中、大阪と東京の高島屋で展示も行っています。その後も展示や、夫の仕事の都合での滞在、パリの日本大使館のインテリアデザインを担当したりと、日本と縁の多いデザイナーです。

さて、展示に関してです。
La création ne connaît pas de formule
クリエイションに公式はない(創造は公式を知らない)
パンフレットの冒頭に記されていたペリアンの言葉です。


枠にはまらず、様々なアプローチで活動した彼女の活動を表すのにぴったりの言葉だと思います。
展示は、彼女が当時何に関心を持ち、影響をうけながら仕事をしていたかを、体感できるように様々なアプローチから展示が構成されていました。これは僕の想像ですが、担当者は人間シャルロット・ペリアンを人々へ伝えるにはどうするべきか?そうとう頭をひねったのではないでしょうか。

数多く展示されていたなかで、特に印象深かったのが、アートとの関わりです。

ペリアンは人々の生活をより豊かにすることを目指し活動していくなかで、デザイン、建築、芸術の融合「l’art d’habiter」を提案していたそうです。
展示ではそうした彼女の活動をより深く理解するために、彼女自身の作品や言葉、経歴の紹介の他、当時仕事や活動を共にしたり、影響を与えたアーティストの絵画や彫刻なども合わせて展示されていました。
その顔ぶれもそうそうたるもので、紹介されているだけでもフェルナン・レジェ イサム・ノグチ ロベール・ドローネー パブロ・ピカソ アレクサンダー・カルダーなど総勢10名以上。
当時の空間が再現されているコーナーもあり、彼女の創った空間にアート作品が飾られているといった演出もありました。以外にも彼女のデザインする空間や家具とは似ても似つかぬ彩りの絵画や彫刻作品がたくさん並んでいました。その光景は異様にさえ思えましたが、当時の彼女の挑戦を体感できる貴重な経験だったと思います。

壁にかかっているのはフェルナンド・レジェの「Composition à l’aloès」
奥に見えるのはピカソの「Guernica」の習作

また、自然が好きで週末は海や山へくりだしていたそうで、当時コルビジェの事務所で一緒だった先出の坂倉準三もスキー仲間です。金曜の夜に出発して月曜の朝にパリに戻り仕事へ向かうような生活の時期もあったのだとか。かなりアクティブです。
そのような余暇のなかでも、自然のなかから美しい形(小石、骨、木片、氷など)を探し出し採集したり、アートとして写真に収めたりと、探求を続けていたそうです。好きで楽しんでやっていたことだと思いますが、これらの活動が近代美術や建築の特徴である直線、円、正方形からの脱却へ役だったといいます。まさに好きこそ物の上手なれですね。

記録された氷のや岩
年輪の写真と持ち帰られたのであろう自然のオブジェ

カップマルタンの休暇小屋

南仏にあるル・コルビュジエの休暇小屋へ行ってきました。

この小屋は彼が65歳ころの作品で、彼と妻のガリがバカンスを過ごすために建てたものです。学生のころ狭小空間の設計課題のときに聞いていらい、いつか訪れてみたいと思っていた場所です。
パリからニースへ飛行機で1時間半、ニースから列車で40分ほどでロクブリュヌ=カップ=マルタン駅へ。そこから海沿いの小道を10分弱歩くと小屋に到着します。
・コルビュジエの祖先がこの辺りで暮らしていたこと、ガリ夫人の生まれがこの辺りだったりと夫妻にとって馴染みのある土地だそうです。

小屋の名前にふさわしく、面積は幅3.66m×奥行3.66m(約8畳)×高さ2.26mと非常に狭く設計されています。というのも、人が快適に暮らせる極小空間の実験も兼ねて建てられたためです。
寸法の決定にはモデュロールという人体のサイズをもとに彼自身が作りだした建築設計のための尺度が使われています。

入り口から、正面にある丸いオブジェのようなものはハンガーです。狭いながらも、突き当たりを作り来客からは室内を覗けないようになっています。
実はレストランに密着するかたちで建てられていて、左手の壁には壁画でわかりづらいですが、レストランへの出入口となるドアが隠れています。
レストランに併設しているためキッチンはありません。
シャワーは外に蛇口があり、そこで水を浴びていたそうです。

ガイドの方が色々と説明してくれましたが、その中で僕がもっとも感動したのが窓です。ガラスと遮光扉の2重構造になっていて、扉の内側は鏡になってます。開けると外の光を鏡が反射して部屋の中が驚くほど明るくなります。
言葉にすると簡単な工夫ですが、実際に体験してみると効果絶大でした。

テーブル 下の箱はLC14というれっきとした家具で、写真のようにスツールとして使用したり倒して踏み台にしたりと、組み合わせや使用する人の発想で様々な可能性を持ちます。僕の好きな家具の1つです。

・コルビュジエを知っている人ならカップマルタンの休暇小屋といえばモデュロールを思い浮かべがちですが、それだけではなく、採光のためのディテール、1台何役もするLC14など狭小空間をいかに快適な空間にするかの工夫と、熟練期でも挑戦し続けていた心意気を実際に感じることができて充実した時間でした。

また、僕がいままで見てきた資料には小屋に関する知識はたくさん書かれていましたが、景色やロケーションに関して書かれていたものは少なかったように思います。僕はこの小屋の魅力の1つは間違いなくロケーションだと思います。小屋から眺める南仏の海は雑念を一瞬で吹き飛ばしてしまうほどのものです。パリで忙しい毎日を送っていたル・コルビュジエが日常を忘れるためにこの地を選んだのも納得がいきます。
ここで、ワインを飲みながらぼーっと、過ごしたであろう彼らが羨ましいです。

Galerie kreo

Galerie kreoへ行ってきました。
パリの6区にあるギャラリーで、おもに家具や生活にまつわるものを提供しているデザイナーの作品を中心に展示しています。
ビンテージデザインのものも展示されていますが、もっとも特徴的なのは企画展です。
デザイナーが今まで発表してきた作品を展示するのではなく、ここでの展示のために新作を制作し発表します。
所属デザイナーの顔ぶれもそうそうたるもので、今回はなんとChair oneやMaydayで有名なKonstantin Grcicの展示がおこなわれています。
CastiglioniのArco lumpにインスパイアされたVOLUMESというシリーズで、普段の製品からは見られない実験的なアプローチになっているようです。
作品はBlue de savoieという石材を切り出して作られていて、
機能がありそうでないような、無さそうであるような、いわば家具のと彫刻の中間のようなもののように感じました。
アルコランプと同様に箒の柄を差し込むと2人で担げるよう設計されています。

 

 

磨き上げるのではなく、サンドブラストであえて石の風合いを生かしています。
好みの分かれそうな作品ですが、美しい形に切り出された石の塊が整然と並べられている様は壮観で気持ちの良いものでした。